日系金融機関の仮想通貨に対する取り組みと見解

目次


    ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)等の暗号通貨/仮想通貨、ブロックチェーン技術に関連するニュースは日々盛り上がりを見せています。日本市場においてもこの分野に関連する新たな取り組みを開始する金融機関、投資対象としての見解を示す機関も続々と増え、注目が集まっています。本記事では三菱UFJファイナンシャル・グループ、みずほファイナンシャルグループ、SBIホールディングスの仮想通貨に対する取り組み、そしてゆうちょ銀行、日本銀行 、マネックス証券の仮想通貨に対する見解を取り上げます。

    日系金融機関の仮想通貨に対する取り組み

    三菱UFJファイナンシャル・グループ 

    2017年10月2日、ブロックチェーン技術を使い独自で開発した決済システム「MUFGコイン」の発表がありました。実運用が開始されれば、1円=1コインの固定相場で両替可能で、スマートフォンのアプリを通じて口座間の送金・決済が可能となります。

    ビットコインは不特定多数のコンピュータが繋がり合うパブリックブロックチェーンによって支えられる一方、「MUFGコイン」は銀行が管理している特定のコンピュータだけが繋がったプライベートブロックチェーンによって支えられています。

    <MUFGコインの特徴>

    • ビットコインなどに比べると送金手数料が低く価格変動がない
    • 他電子マネーと異なり円に戻せる(等価交換ができる)
    • 他ユーザーとワリカン機能の使用、コインのやりとりができる

    上述のとおり既存サービスに欠ける点を補うシステム構想となっています。2017年5月より実証実験として三菱UFJFGの社員が使っており、来年度以降の実用化が見込まれます。

    (引用:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1710/02/news105.html)

    みずほファイナンシャルグループ    

    みずほフィナンシャルグループは9月20日金融庁と日本経済新聞社などが東京都内で開いている「FIN/SUM(フィンサム)ウイーク2017」で、円と等価交換できる仮想通貨「Jコイン(仮称)」の構想を明かしました。あらかじめ銀行口座にある円をJコインに替えることで決済、個人間の送金できるようになります。

    実運用が開始されれば、決済データの活用がJコインの強みとなります。ユーザーの買い物・送金履歴がビッグデータとして蓄積され、他企業や銀行との共有で商品開発等に活かされるようです。日経新聞の報道によるとみずほはJコインの創設に向けてゆうちょ銀行の他、約70行の地銀が参加する準備会合を開いています。

    SBIホールディングス

    日系金融機関の中でもSBIホールディングスは仮想通貨関連事業に本格的に参入しているようです。代表的な取り組みとしてとしては以下のようなものがあります。

    1. SBIバーチャル・カレンシーズの設立(2016年10月27日)
    2. 仮想通貨ファンドの組成 (2017年9月19日)
    3. 決済用プラットフォーム「Sコインプラットフォーム」の開発(2017年9月28日)
    4. 仮想通貨及びICOの格付け事業 (2017年10月11日)
    5. 仮想通貨のデリバティブ関連事業を行うBCause LLCへ出資 (2017年10月18日)
    6. Huobiグループとの資本業務提携(2017年12月7日)

    1.同社は2016年11月SBIバーチャル・カレンシーズを設立し、仮想通貨取引所を運営しています。一般の口座開設受付開始は12月下旬を予定しているようです。

    「SBIバーチャル・カレンシーズでは『ストレスフリーな仮想通貨取引を』『仮想通貨取引をもっとスマートに』をモットーに皆様に仮想通貨の可能性を最大化するサービスのご提供を目指しております。 」

    (引用:https://www.sbivc.co.jp/adv/

    2.米ヘッジファンドのCoVenture Holding Companyと組んで仮想通貨に投資するファンドを組成すると発表しています。投資助言・仲介サービスを提供する合弁会社を共同で設立する見通しもあり、機関投資家のニーズにも応えられる取り組みがされています。

    3.決済コストの低減を目指し、株式会社Orbと共同で独自の決済用コイン「Sコイン」と決済用プラットフォームの開発を始めています。

    「当社の決済用プラットフォーム『Sコインプラットフォーム』(以下「本プラットフォーム」)では、仮想通貨や前払式支払手段の電子マネー等、様々な電子通貨を発行し決済に利用することが可能となっており、当社が発行する『Sコイン』や地方自治体・事業会社・地域金融機関などが発行する独自のコイン(トークン・地域通貨)を用いて、スマートフォンを用いた簡易な決済手段を提供していきます。」

    (引用:http://www.sbigroup.co.jp/news/2017/0928_10815.html

    (引用:http://www.sbigroup.co.jp/news/2017/0928_10815.html

    4.子会社のモーニングスター株式会社に関して、仮想通貨及びICOの格付け事業を開始しています。ICOレーティングの提供は国内初であり、同社の持つ投資信託や債券格付けの評価手法やノウハウを応用し、仮想通貨の格付けを国内外の投資家に向け提供を目指しています。

    5.米国で仮想通貨のデリバティブ関連サービスを提供するBCause LLCへの出資を行なっています。この出資はマーケットボラティリティの安定と新しいデリバティブ市場の創設を目指すものとされています。

    6.今月には中国最大級の仮想通貨取引所「火幣」を運営しているHuobiグループと資本業務提携を締結しました。同社の仮想通貨関連技術、ノウハウ、人材といったリソースを活用しSBIバーチャル・カレンシーズにおけるシステム体制を整えるとのことです。

    2017年終わりにかけ仮想通貨関連の事業に積極的に乗り出しており、今後の取り組みにも注目が集まっています。

    日系金融機関の仮想通貨に対する見解

    ゆうちょ銀行

    佐護勝紀副社長(最高投資責任者、CIO)は2017年11月17日のロイターのインタビューで以下のように述べています。

    「仮想通貨のバリューはゼロではないと思うが、個人的にはビットコインは良くて100ドルくらいの価値とみる。ITバブルの時はドットコム系の株価が上がったが、少なくともヤフーや楽天のサービスを利用する人が周りにいた。一方、仮想通貨がらみのビジネスをやっている人は知り合いに何人もいるが、売買している人は直接は知らないし、使っている人は見たこともない。その意味ではITバブルよりひどい」

    「100ドルになったら当行も検討する。ただ、株もそうだが、こういう値動きのものをショートすることにリスクリターンが見合うタイミングはそうないので、当行は多分やらない。バブルだと思ったら近寄らないのが正しい選択だ」

    (引用:https://jp.reuters.com/article/japanpostbk-interview-idJPKBN1DH07F

    上述の通り仮想通貨に対してネガティブな姿勢を示しており、ゆうちょ銀行が取り扱いを始める日はまだ遠いと考えられます。

    日本銀行

    2017年11月22日、トムソンロイター主催によるフィンテック関連の討論の際日本銀行の決済機構局長である山岡浩巳氏は暗号通貨/仮想通貨について「遠すぎる」と主張しました。山岡氏は、デジタル通貨または仮想通貨への移行はそうすぐにはできないと考えているようで、「仮想通貨は銀行システムをあまりにも大幅に変えてしまうだろう。」と述べています。

    マネックス証券

    日本経済新聞の報道によると米シカゴ・マーカンタイル取引所のビットコイン先物上場予定、米ナスダックによる18年の先物上場計画を受け、マネックス証券の広木隆氏は「先物が始まれば機関投資家は現在の価格が根拠のないバブルと判断し、先物を売り建てる可能性がある」と述べています。

    売り建てる、とは将来下落すると判断した投資対象を売り、値下がりした時点で買って利益を得る投資手法です。機関投資家は現状のビットコインの相場に関してバブルであるとの捉える方があることが伺えます。

    現金比率の高い日本における仮想通貨

    メガバンクは続々とブロックチェーン技術の応用を通して新たな事業に乗り出していることがわかります。海外と比べて決済に占める現金比率の高い日本において既存金融機関の発行する仮想通貨が普及することはATM網維持コスト削減の観点でも、利用者の利便性の観点でも、有意義なサービスとなると考えられます。

    規格の異なる仮想通貨決済手段が増えつつある、という状況の中で発行元機関の間で協力や提携がなされるのか、それともいずれかの仮想通貨が主流となるのかは現段階では予測できません。

    しかしカード決済、電子マネー決済に続き、仮想通貨での決済がキャッシュレスな手段の一つとして定着する日もそう遠くはないかもしれません。

    また価格の高騰が続くビットコインやイーサリアム等仮想通貨(投資対象、取り扱い対象として)に対しては未だ非常に慎重な見解が主です。日本の機関投資家がこれらの取り扱いを始めるのはまだ先だと考えられます。しかし価格変動が落ち着き、資産価値が安定した際に取り扱いが始まる可能性はゼロとは言えません。今後大いに注目が集まる領域の一つと言えるでしょう。

    コメントする

    メールアドレスが公開されることはありません。