ICOが変える世界(2017年概況と2018年再加熱の可能性)

目次

    ICOとは?

    ICOとは、Initial Coin Offeringの略で、企業が独自の仮想通貨(トークン)を発行し、投資家がより流動性の高い仮想通貨(ビットコインやイーサリアム等)でトークンを購入する形式の資金調達手段を指します。「クラウドセール」や「トークンセール」とも呼称されます。

     ・資金調達目的がある

     ・法定通貨の代わりに仮想通貨で資金調達を行う仕組み

     ・デッド/エクイティファイナンスと違い仮想通貨を発行して資金調達を行う仕組み

    「ICOは「Initial(最初の)Coin(コイン) Offering(売り物)」の略称で、新規公開株IPO(Initial Public Offering)になぞらえてICOと呼ばれています。広義的に「暗号通貨(仮想通貨/トークン)を発行し、資金調達を行うこと」を意味します。

    投資家にとってICOは、取引所上場前に暗号通貨/仮想通貨/トークン/コインを入手できるチャンスで、上場後イグジット(売却)によってキャピタルゲイン(売買差益)を得ることも可能になります。ICO時に設定されたトークンの値段より、上場後高い値段で売却ができれば利益に、反面価格が下がった場合は当然資産が減ることになります。」

    (引用:https://consensysmediajapan.com/3251.html

    現在のICO/市場概況

    elementus.ioの調査によると、ICOの過去4年間(2014年1月〜2017年11月)に渡る調達額合計は約$6.3billion(約7142億円)に及びます。2014〜15年では、100万ドルに及ぶ調達が稀でしたが、近年では月平均として約$1.3billion(約1473億円)に及ぶ金額が調達されている模様です。2017年11月は過去最大で、148件のICOがあり、調達額は$1.39billion(約1575億円)に及びました(下記グラフを参照)。

    これらの統計から、「ICO加熱現象は終わりを迎える」等の意見に反し、ICOは継続的な増加傾向にあるのが読み取れます。

    (引用:https://elementus.io/blog/token-sales-visualization/

    (引用:https://elementus.io/blog/token-sales-visualization/

    (Youtube動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=ac1P3GXkFxc

    Elementus.ioによる上記グラフでは、過去4年のICO案件が地域毎に識別されています。北米(橙色)、ヨーロッパ地域(青色)とアジア(緑色)の3地域が主要なICO実施地域と分かります。

    従来の方式では資金調達はシリコンバレーが中心でした。しかしICO誕生により北米・ヨーロッパ・アジア地域で世界同時多発的にICOが実施され、世界中に分散したことが窺えます。ICOという手段がなければ、こうした事態は起きなかったでしょう。

    ICOの魅力とは?

    何故これほどICOという手段を選択する企業/プロジェクトが増えているのでしょうか。

    近年のICO加熱には、様々な要因が考えらえます。

    「素早く」「安く」「簡単な」手法(企業側)

    従来の資金調達手段として、IPO(Initial Public Offering / 新規上場株式)があげられます。しかし、IPOの場合、証券会社や取引所による厳しい審査基準が設けられている為、企業側への負担が大きくなります。

    その一方、ICOでは「ホワイトペーパー」を作成し、その内容に共感した人々がネット上でトークンセール参加者となり、投資する仕組みとなっています。上場における厳しい審査を必要とせずに、ゼロスタートから、構想段階・早期段階での資金調達が可能となります。又、株式の発行を必要としない為、配当の分配義務がありません。

    ICOは「資金調達の民主化」とも呼称され、審査やコストの負担を理由に資金調達ができなかった個人や企業に、資金調達の機会を与えます。

    初期段階からプロジェクトに参入(投資家側)

    ホワイトペーパーやスタートアップの初期段階から、リーチが難しかった企業のプロジェクトに参入する事ができます。更に、時間や場所に関わらず、国際的且つ手軽な投資を可能とします。

    膨大なリターンの可能性(企業側・投資家側)

    ICOによって、億単位の巨額を調達するケースや、膨大なリターンを得た事例もあります。icostats.com「ROI since ICO」よると、NXT(ネクスト)はICO後価格は暴騰し、上昇率は6740733%(67307倍)になります。

    投資家側にもメリットがあります。通常の株式市場に比較し、ハイリターンやキャピタルゲインを得られる確率が上がります。

    (2017年12月21日午前11時調べ 引用:https://icostats.com/roi-since-ico

    仮想通貨の普及

    ICOは仮想通貨の相場に連動しています。ICOにおける投資元本であるビットコインやイーサリアム等の相場が高騰している為、これらの資金を利用した調達が盛んになります。

    12月18日時点で、仮想通貨の時価総額が$600billion(約68兆円)に達しました。仮に、仮想通貨市場の相場が下落しているとしたら、仮想通貨の流動性も低下し、ICOによる資金調達が困難になります。

    ICOによる波紋、エコシステムへの影響

    ICOの普及と共に、投資家や様々な業界/金融機関のあり方に影響を及ぼすと考えられます。

    ベンチャー・キャピタル(VC)との競争

    ICOとは異なり、VCには厳しい審査基準が設けられています。よって、今後VCの資金調達手段としての人気が下落する、という見解もあります。その一方で、新たな傾向として、VCやPEファンド(未公開株)がICOの一投資家・参加者となり、双方の共存が可能になる、という見方もあります。

    今年9月に日本最大手であるVCジャフコが、ICO実施支援プラットフォーム「COMSA」の開発を手掛けるテックビューロ社に投資しました。これに対し、テックビューロ代表取締役の朝山貴生氏は「VCとICOは、世間で思われているように競合するものではない。むしろ協働、共存できる」と述べています。

    「ICOが十分に発達するならVCは不人気になる、といった論調も一部にあるが、『VCとICOは、世間で思われているように競合するものではない。むしろ協働、共存できる』と朝山氏は説明する。実際、日本最大手のVCであるジャフコがCOMSAを推進するテックビューロに投資し、個人投資家の千葉功太郎氏がCOMSAに出資していることがその証拠だという訳だ。審査が厳しいVCが出資した株式会社の社会的信用は、ICO参加者にとってもプラスに働くといえる。」

    (引用:http://jp.techcrunch.com/2017/09/07/techhbureau-raises-1-6b-yen/

    銀行や金融政策への影響

    ETHLend等、融資に特化したブロックチェーン上のプラットフォームの開発により、仮想通貨によるトランザクションが盛んになっています。結果として、複雑な手続き・手数料を必要とする銀行や従来の決済システム上の融資ニーズは低下します。長期的に見ると、貸出金利の低下圧力の上昇や国債/社債の利回り等に影響を及ぼします。

    仲介機関の排除

    当事者間で取引/決済が行われる為、金融売買取引における仲介業者/機関の必要性がなくなります。「送金者」と「受取人」、「顧客」と「企業」等、直接当事者を結びつける事によって、効率性が増し、コスト削減に繋がります。

    投資家の動向

    従来のIPO等による株式市場上場銘柄に投資していた投資家達が、ハイリターンや高額のキャピタル・ゲインを期待し、ICO市場へ参入する事が予想されます。

    投資家保護の問題

    R3CEVのDavid Rutter氏はICOに対し批判的な意見を述べました。「多くのICOはパワーポイント資料や構想の段階に止まり、ビジネス企画として成り立たないものが多い。パワーポイントを作成するだけで、$10million(約11億円)単位の金額が調達できるなら、誰だって資料を作成する。実際にそれが経済及び若い起業家にとってメリットになると思っているならばの話だけど。もちろん、私はそうは思わない。」

    「"Many of them are based on powerpoint decks and not a lot more, not fundamentally sound business plans," he says. "Of course you would, if you can go and make $10 million or $15 million or $20 million on an ICO in a matter of hours, based on a really well put together powerpoint — if you think that’s good for the economy and the world and young entrepreneurs, that’s fine. I don’t."」

    (引用:http://uk.businessinsider.com/initial-coin-offerings-explained-icos-token-crowdsale-2017-7

    更に同氏は「金融機関において、セキュリティや法律上の規制があるのは、顧客・投資家を守るためにある。規制体制が整っていないICOに、私は参加しようと思わない」と指摘し、ICOの難点である、顧客のセキュリティや保護における懸念を示しました。

    「"There’s a reason securities laws exist and that is to protect the consumer and to make sure that what you’re offering is actually fundamentally of value," Rutter says. "These initial coin offerings I would never participate in, I don’t see how they’re compliant with current securities regulations." 」

    (引用:http://uk.businessinsider.com/initial-coin-offerings-explained-icos-token-crowdsale-2017-7

    特にアメリカでは、ICOを巡るホワイトペーパーによる詐欺事件が多発しています。現に、世界各国でICOを懸念視する動きが見られます:

    2017年度:各国の金融当局によるICOへの規制監督

    7月25日 米国証券取引委員会(SEC) トークンは「有価証券にあたる可能性があり、規制対象」となる
    8月1日 シンガポール金融管理局(MAS) トークンの「一部は有価証券である」
    9月4日 中国人民銀行(PBoC) ICOは「詐欺」である為、禁止
    9月4日 ロシア連邦中央銀行 ICOは「高リスク」である
    9月5日 香港金融監督当局(SFC) トークンは「有価証券対象となる可能性」
    9月12日 英金融行為監督機構(FCA) 「極めて高リスク」な投資、損失を「覚悟」
    9月29日 韓国金融委員会(FSC) 中国同様、「詐欺リスク」の為、禁止
    10月27日 日本金融庁(FSA) 注意喚起文書を公表

    ICOの未来

    ICOは今後、様々な業界や機関に影響を及ぼし、エコシステム(経済圏)に波紋を呼ぶと考えらえます。それ以外にも、投資家のセキュリティ等の観点から懸念の声もあげられ、各国の金融当局は多様なアプローチを展開しています。

    しかし、ロイター・コラムニストの村田雅志氏によると、ICOもビットコイン同様、更なる拡大が予想されます。当初、ビットコインを批判する意見が多かったにも関わらず、今では世界的に普及し、仮想通貨の「先駆者」及び「象徴」となりました。

    「ICOの動きを人為的に止めることが難しいのは、ビットコインの歴史をみれば容易に理解できる。ビットコインの認知度が高まり始めた2012年当時、価値の裏付けがないことや、金融当局の監視外にあることを根拠にビットコインの将来性を否定する見方があったが、ビットコインの存在感が高まり、世界各国に普及したことで、こうした見方は否定された。

    ICOもビットコインと同様の展開をたどるとみられ、今後は金融当局の規制動向の影響を受けながらも、企業側、投資家側の双方のメリットを背景に存在感を高めると考えられる。」

    (引用:https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-masashi-murata-idJPKCN1BP0SB

    更に、投資者保護の面で、様々な保護規制が強化されれば、結果としてICOがより一層普及する事となるでしょう。

    ICOの浸透は、ブロックチェーンやトークンの発行を通じたトランザクションを可能にし、新時代へのパラダイムシフトを促すでしょう。法定貨幣から代替貨幣への移行、即ち「トークンエコノミー」の到来を示唆しているのではないでしょうか。

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