ICOを試みる国や自治体(エストニア、ベネズエラ、ブラジル)

目次

    ICOを試みる国・自治体

    2017年1年間で世界的に480件、4000億円以上のICOが行われました。新たなプロジェクトのための資金集めを目的としたベンチャー企業にとどまらず、国や自治体の独自の仮想通貨発行に関するニュースが話題を集めています。現在ICOの考案を発表しているエストニア、ベネズエラ、サンパウロ市を取り上げ、それを先導している政府や自治体がICOを試みている動機、理由を紹介します。

    エストニア「エストコイン(Estcoin)」

    概要

    2017年8月、仮想通貨「エストコイン」の発行に関する提案が発表されました。エストニア政府が発行・管理し、ユーロに固定されたトークンになる予定です。プレセール等の日程は明らかになっておらず、まだ構想段階にあるようです。

    目的

    デジタル国家としてのインフラ作りを推し進めるための投資を、国内外から受け入れることが最大の目的となっています。仮想通貨に投資するのはハイリスク・ハイリターンですが、エストコイン保有者はエストニアの国家開発サポートというインセンティブを持ち、投資に関わることができます。

    エストコインによるICOで調達された資金は、Public Private Partnership(PPP)を通じて管理されます。それに伴い、スマートコントラクトから人工知能に至るまで、様々なテクノロジーやイノベーションへの投資を行う予定です。集まった資金の大部分は、コミュニティが運営するベンチャーキャピタルファンドに利用されることが想定されており、エストニア発のベンチャー企業の創出が促されることでしょう。

    Investing in any crypto asset can come with high risks and high rewards, but holders of estcoins would have the added incentive of supporting the development of our digital nation.

    The funds raised through estcoins could be managed through a Public Private Partnership (PPP) and only used as described in the agreement to actually help build the new digital nation. This would enable Estonia to invest in new technologies and innovations for the public sector, from smart contracts to Artificial Intelligence, as well as make it technically scalable to benefit more people around the world. Estonia would then serve a model for how societies of the future can be served in the digital era.

    In addition, a large proportion of the funds could be used as a community-run VC fund on behalf of investors. The money could then be used to support Estonian companies, including those established by other e-residents.」

    (引用:https://medium.com/e-residency-blog/estonia-could-offer-estcoins-to-e-residents-a3a5a5d3c894

    エストニアでは「e-Residency」という電子政府システムを利用し、様々な公的サービスがネットを通じて受けられるインフラを構築しています。今回のエストコインの発行は外国からのさらなる投資を後押しするものとなるかもしれません。

    ベネズエラ「ペトロ(Petro)」

    概要

    2017年12月、ベネズエラ独自の仮想通貨「ペトロ」の導入が明らかにされました。ベネズエラ産の原油・金・ダイヤモンド等の天然資源を裏付けとしたもので、1ペトロあたり原油1バレルの価格に相当します。

    マドゥロ大統領によると、総額$60億相当のペトロが発行される見通しで、機関投資家向けのプレセールは2018年2月20日に予定されています。ペトロは法定通貨のボリバルでは購入できませんが、通常のICOと同様、ビットコインやイーサリアムを利用して購入できます。ビットコインや従来の仮想通貨と異なり、政府が中央集権的に管理者となり、国債のような機能をもつ形になると考えられます。

    「“Now, the government is announcing a pre-sale that makes the Petro look more like a token than a cryptocurrency in its own right.

    “The presale and initial offer will be made in hard currencies and in cryptocurrencies. It is not going to be done in bolivars at this stage. Our responsibility is to put [the petro] in the best hands and then a secondary market will appear,” said Carlos Vargas, the so-called cryptocurrency superintendent for the government.

    According to Maduro’s comments on the matter, the Petro will initially have 100 million tokens worth around $6 billion.”」

    (引用:https://cryptovest.com/news/venezuela-goes-ico-government-announces-petro-pre-sale/

    目的

    ベネズエラは近年深刻な経済危機に見舞われており、2017年のインフレ率は800%を超えています。国民は食料品・医薬品等の生活必需品の入手が難しく、餓死者も出ているほど非常に厳しい財政状況に陥っています。

    財政赤字や自国通貨安の対応策として政府は紙幣の増刷を続けているものの、国際通貨基金の見通しではインフレ率が今年1万3000%に急上昇するとされています。そんな特殊な経済事情が背景となり、打開策として今回ペトロの発行が提案されました。ベネズエラが他国に負う借金を仮想通貨での返済を試みる可能性もあります。

    ブラジル(サンパウロ)「ビルドコイン(BuildCoin)」

    概要

    ブラジルのサンパウロでは国のインフラ整備を建前に、仮想通貨「ビルドコイン」を発行することを決定しました。これは、ブラジル政府が推進する初の仮想通貨プロジェクトとなります。

    「the Llumina SP project is the first cryptocurrency funding of a state government project in Brazil.」

    (引用:https://www.prnewswire.com/news-releases/state-of-sao-paulo-brazil-signs-infrastructure-agreement-with-cgla-on-behalf-of-the-buildcoin-foundation-300589234.html

    目的

    簡単に先述しましたが、このトークンの発行による資金調達(ICO)を利用し、インフラ改善計画を推し進めています。2016年のリオデジャネイロオリンピック時、インフラ整備の粗悪さが浮き彫りにされ、その改善のための取り組みとなります。

    世界中からプロジェクト協力者となるエンジニアを集め、労働の対価として「ビルドコイン」を与える、という流通モデルを確立していく方針です。既存のプロセスよりも安価で、迅速かつ透明性が高く、インフラ基盤を作る上で様々なメリットが見込めるようです。

    「“São Paulo officials say a model that can attract more minds from around the world and compensate them with cryptocurrency can help the state meet its infrastructure requirements in a way that is more transparent, cheaper and faster than the existing process.”」

    (引用:https://www.coindesk.com/sao-paulo-wants-pay-infrastructure-cryptocurrency/

    このコンセプトを実証するために 老朽化した公共照明システムを取り替える「イルミナSPプログラム」が開始される予定です。ビルドコインはプロジェクトのフィージビリティスタディ(プロジェクトが実現可能かどうかを検討するための事前調査や研究)をするエンジニアへの報酬に充てられる予定です。

    建設業界におけるブロックチェーンと仮想通貨の応用は政府への負担を減らすだけではなく、プロジェクトに貢献したいエンジニアが自分のスキルセットを活かせる場を見つけたり、共に作業をする仲間を見つけられる機会の創出にもつながります。

    “In this way, CG/LA and BuildCoin believe that a blockchain and a native cryptocurrency for the infrastructure and construction industry will not only ease burdens on governments, but also open up new opportunities for subject matter experts around the world who are eager to contribute to projects but have historically had difficulty finding studies or colleagues to match up with their particular skill sets.”

    (引用:https://www.coindesk.com/sao-paulo-wants-pay-infrastructure-cryptocurrency/

    ブラジルは不景気により、インフラに充てられる投資はGDPのわずか1%に過ぎず、これは既にあるインフラを維持することを考慮しても少なすぎるとされています。ビルトコインの発行は国の建設産業の効率化を進め、インフラの改善に繋がることを期待されています。

    ICOの有用性

    上述したように、電子システムインフラへの投資、ベンチャーエコシステムの活性化、自国の法定通貨下落への解決策、インフラ改善のための投資、等々国・自治体がICOを実施する動機は様々です。国内外からの安易で迅速な資金調達を可能にするICOの有用性が、国家の政策という新たな活用段階に到達してきました。

    本記事で取り上げた自治体が、実際にトークンを発行した際に目標調達金額まで集めることができるのか、そしてその資金を有効に利用することができるかどうかが要諦となります。これらが成功モデルとなれば、さらに多くの国・自治体がICOに実行し、世界経済の活性化が見込めるかもしれません。

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