ICOとトークナイゼーションの未来

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    2017年から盛んに行われるようになったビットコインやイーサリアム等の仮想通貨を活用したICOですが、投資するにはリスクがとても高く、詐欺も多いため、中国、ベトナムなど多くの国から規制されています。このようなことからメディアの報道でも良いニュースは聞かず、悪い印象を持っている人が多数を占めていることが現状です。

    しかし、ICOはまだ黎明期にあり、大きなポテンシャルを秘めているとも言われています。トークナイゼーションには全てのものをトークン化することにより、価値の流動性を実現するという考えが根底にありますが、ICOはトークナイゼーションの形の1つとして考えられます。この記事ではICOによって生み出されるトークン、トークナイゼーションの実現により、もたらされるメリットについて言及します。

    ICOとトークンの種類

    ICOで発行されるトークンはユーティリティー・トークン、投資トークン、株式トークン(エクイティ・トークン)と大きく3つに分けられます。投資トークンとは、保持をしても株式のような機能はなく、またユーティリティ機能もないため、市場におけるキャピタルゲインのみが期待できるトークンです。株式トークンとは名前の通り、保持することで配当を受け取る権利を得る等、発行元企業の株を保持するのと近い機能を持つことができるトークンです。

    ユーティリティー・トークンのメリット

    ユーティリティー・トークンとはトークン発行元の企業のサービスを利用する際に、トークンを利用、保持することで何かしらの利益がもたらされるものです。ユーティリティー・トークンは「投資トークン」(投機対象のトークンであり、サービスを利用する上でのメリット、株式は付与されない)、「株式トークン」(株式、共有持分の付与を保証)と違い資産・株式として認識されない為、規制されない可能性が高いというメリットがあります。

    “What is the definition of Utility? Utility means the total satisfaction that is received by the consumption of the goods or services. Most of the ICOs do not maximize their token utility. The tokens should be absolutely integral to the ICO and must increase the overall value of your final product.”ーAmeer Rosic

    「ユーティリティーの定義とは何か?ユーティリティーとは、ものかサービスを消費、利用することにより得られる、総合的な利益である。ほとんどのICOはトークンのユーティリティーを最大限に引き出せていない。しかしトークンはICOにとって不可欠なものであり、完成したプロダクトの価値を高めるようなものでなくてはならない。」

    (引用:https://blockgeeks.com/guides/why-most-icos-will-fail/ )

    上記のRosic氏の文章から分かるようにユーティリティ・トークンを作成することは考慮しなければならない事柄が多く難しいものです。しかし、「完成したプロダクトの価値を高める」ようなユーティリティ・トークンの作成に成功すれば、トークナイゼーションのメリットを最大限に引き出すことができるでしょう。

    これに対し、投資トークン、株式トークンはICOを行う必要性があるとは言い切れません。これらのトークンを発行している企業は、手軽な資金調達手段としてICOを利用している傾向が強いと見てとることができます。トークナイゼーションが社会に一般化してない現状を考慮すると、ICOを行う明確な理由がなければICOを使わない手段で資金調達をすることが望ましいかもしれません。

    ユーティリティ・トークン作成の条件

    ユーティリティートークンを作成する場合、「投資トークン」「株式トークン」と違い、トークンを保持することでシステムを利用する時に利益が生まれる条件を考える必要があります。

    その際、考えるポイントとして下記の4つがあります。

    1. 誰が買い、保持したがるか
    2. なぜ人々は発行されたトークンを使用するのか
    3. どのような流れででトークンが必要となるのか
    4. トークンを発行するよりも効率の良い選択肢はないのか

    1~3のポイントが深く思索されていないと長期的に保持する必要がなくなり、価格のボラティリティーが高くなり、投機対象となる可能性が高くなります(投資トークン)。また4のポイントも先に述べたように、ICOの必要性があるかどうか考える上で重要なポイントです。利用者に十分メリットをもたらし、コストを削減するようなユーティリティ性の高いトークンを生み出せなければ、トークン自体がユーザー獲得の障壁となり、ICOが失敗する可能性が高くなります。

    ICOは以前までは、人の興味を引くようなホワイトペーパーを書ければ、簡単に資金を集めることが可能なものでした。しかし仮想通貨バブルが弾け、グーグルがICO・仮想通貨に関する広告規制を開始するなど、仮想通貨業界にとって好ましくない状況が続いていることから、本質的に価値のあるトークンを作り出さなければ、ICOが成功する可能性は低いと考えられます。

    「投資トークン」「株式トークン」などトークナイゼーションのメリットを引き出すシステムを持っていない、先を見通したビジネスプランがない、その計画を実現する開発チームを保有していないICOは、現状では資金調達の段階で失敗するでしょう。実際に先週の記事でも取り上げたように、2017年にTokendataでリストアップされたICOは既に59%が失敗しています。

    ユーティリティ・トークンの例

    Bancor protocol

    トークンの種類が増えることにより、知名度の低い買手の見つからないトークンも生まれました。これは流動性リスクと呼ばれるものですがBancor protocolはスマートトークンを発行することにより、これを解決しています。

    The DAO

    数百万イーサがハッキングにより盗難されたことで有名なDAOは、イーサリアムネットワークをベースに稼働する自律分散型ファンドでした。ユーザーがDAOcoinを保持することで、どのプロジェクトに投資するか決める投票権を得ることになっていました。イーサリアムプラットフォームに実装されているスマートコイントラクトにより、ファンドの管理人がいなくても自動で投資対象が定められるシステムが構築されていました。

    Golem

    Golemとは、パソコンの利用していない領域を計算資源として、プロバイダーがその計算資源をリクエスターに提供するシステムです。プロバイダーの数が多ければ、その分計算処理能力も上がり、スーパーコンピュータ並のコンピューティングが安価で実現できます。この“Golem supercomputer”にアクセスする際に必要となってくるのがGolem Tokenです。リクエスターはGolem Tokenを購入し、Golem supercomputerを利用する際にプロバイダーに支払います。

    トークナイゼーションによる流動性の実現

    トークナイゼーションの可能性

    上記で述べたように、ICOで発行されるトークンが、ユーティリティー・トークンの場合は様々なサービスをトークン化することでトークナイゼーションのメリットを最大限に生かしています。現時点では、ICOでのみトークナイゼーションが行われており、ごく一部の人しか、その恩恵を受けることができていない状況があります。

    しかし、ブロックチェーン技術がより洗練され、その適用がより一般的になれば、将来的には身の回りにある資産、能力全てのトークナイゼーションが可能になることが考えられます。

    「In the future, you’ll be able to tokenize the value of unused bedrooms and backyards in your home. You’ll be able to tokenize use of your vehicle for Uber driving while you’re away on travel. You’ll even be able to tokenize access to your phone so marketers have to pay you tokens in order to gain access to your attention. Yes, this will happen.」ーChris McCoy

    「将来的には使用されていない寝室や裏庭をトークン化し価値として提供できるようになる。旅行中に自身の車の使用を価値としてトークン化することも可能になる。さらに言うと、市場が宣伝費として各個人のスマートフォンにアクセスする際、料金を払う必要も出てくるだろう。」

    (引用:https://techcrunch.com/2017/08/20/yesterdays-plastics-are-todays-crypto-tokens/)

    Chris McCoy氏の予想が現実化すればトークナイゼーションにより、市場から隔離されていた人々も実世界の資産・能力などを細分化し様々な方法で収入を生み出すことが可能になります。トークナイゼーションが一般化することによって、既存のシステムでは達成できなかった社会の豊かさ、貧富の差の是正に繋がることが期待できます。

    「Tokens will make it possible for people of all economic levels to buy into investments that so far have been out of their reach.」ーChris McCoy

    「トークンは全ての経済力レベルの人たちに、今まで手の届かなかった、金融商品を手に入れる機会を与える」

    (引用:https://techcrunch.com/2017/08/20/yesterdays-plastics-are-todays-crypto-tokens/)

    トークナイゼーションの障壁

    トークナイゼーションの一般化を実現できるレベルまで技術が進展するのは近いでしょう。しかし、技術面以外でも様々な障壁があります。

    銀行システムとの統合

    トークナイゼーションの障壁としてはまず、既存の銀行システムとの統合の必要性が挙げられます。既存の銀行システムは長い歴史があり保守的な傾向が見られることから、トークナイゼーションのような新しい技術と統合化することはかなり難しいと考えられます。

    しかし、一方でブロックチェーン技術を銀行のシステムに取り入れようとする動きが、各国で見られ、ブロックチェーン技術のポテンシャルを最大限に引き出しているトークナイゼーションもいずれ銀行システムに取り入れられる可能性が考えられます 。

    国家による規制

    もう1つは国家による規制です。ICOはホワイトペーパーを公表するだけで、比較的容易に資金調達できることはメリットとしても考えられますが、ずさんな計画しか立てられていない、ホワイトペーパーに記載されている計画を実現できる開発チームを所持していない、詐欺の対象となっていることから、中国ではすでに規制されており、EU、ロシアなども規制を行う方針を取っています。

    大衆からの信用

    最後に大衆からの信用を得られていない現状があるという問題があります。

    トークナイゼーションにより価値を流動化させるという考えは、今までにないものであったため、理解し難いものであると考えられますが、ICOやトークンという考え方がより一般的になればトークナイゼーションへの抵抗も薄れるでしょう。

    現在ICOには投機目的で投資する人々が多く見られ、市場全体がバブルとなっています。大衆の信用を得るには現在の仮想通貨、ICOバブルが収まり、価格が安定する必要があると考えられます。

    (参考:http://reinhard.one/blog/2017/11/icos-the-token-economy-what-is-your-token-about/,

    https://techcrunch.com/2017/08/20/yesterdays-plastics-are-todays-crypto-tokens/)

    最後に

    2017年から盛んに行われるようになったICOは、トークナイゼーションが一般に浸透する第一歩として考えても良いでしょう。しかしそのICOも、詐欺や十分思索されていない計画により、その多くが失敗に終わることが予想されています。

    トークナイゼーションが社会の一部として機能するには、様々な障壁があり、まだ長い時間が必要だと予想されます。まだ身の回りにある細分化された価値を市場で取引できるようになるトークン・エコノミーの実現は難しいですが、現実化すれば現在の経済システムは予想をはるかに上回るレベルで改善されるでしょう。

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