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イーサリアム資金盗難の救済措置 EIP-867にまつわる議論と平井氏の懸念

イーサリアム資金盗難の救済措置 EIP-867にまつわる議論と平井氏の懸念

2018/03/06 at 3:07 PM 0 comments
イーサリアムなどの仮想通貨/暗号通貨を利用したICOによる資金調達額は、2017年に約40億USドル相当に達しました。このように近年ICOによる資金調達の活発化に伴い、ICOプロジェクトを狙ったハッキングによる盗難や、実装されたコードの不備による資金凍結(誰も取り出せなくなること)の被害も増加しています。そこでETHが盗難・凍結した場合に、そのETHを取り戻す方法がEIP-867として提案されました。 本記事は盗難・凍結したETHを取り戻す方法を提案したEIP-867にまつわる連載記事の後半です。前半記事では、EIP-867で提案されたETH回収の仕組みについて解説しました。本記事ではこの提案に関する考察と、イーサリアムEIPコミュニティの編集者である平井氏が示した2つの懸念に焦点を当てて解説をします。 ハードフォークによる救済 当時最大級のハッキング被害が発生したThe DAO事件では、イーサリアムがハードフォークすることによってハッキングが無かったことになり、ETHは取り戻されました。ハードフォークではブロックチェーンに大幅な仕様変更を加えるために、それまでのブロックチェーンとの互換性は保たれなくなります。 ハードフォークする新たなブロックチェーンが提案された際、この新しいブロックチェーンを正当なものとして受け入れるかどうかは、ネットワーク上の各ノード(ブロックチェーンの管理やマイニングを行っている世界中に分散したコンピュータ)が選択します。 The DAO事件では、ある特定のハッキングのみを無効にするということが、ブロックチェーンの特長である ”過去に起こったことが変更不可能である” という性質に反するとして、1割程度のノードから反対されました。結果として、9割方のノードが採用した新しいブロックチェーンが正式なイーサリアムとなり、反対の立場にあるノードが元のブロックチェーンを運用し、これがイーサリアムクラシックとなりました。 このようにハードフォークを行うには、その提案を行う事自体の労力に加えて、ノード全体の半分以上の同意が必要であり、簡単に実現できるわけではありません。 EIP-867によるソフトフォーク EIP(Ethereum Improvement Proposals)コミュニティでは、現状のイーサリアムの問題に対する解決策が議論され、一般的に現状のイーサリアムに互換性のある形式の提案が承認され、アップデートとして配信されます。 EIP承認の流れやERCについての記事はこちら ネットワーク上のノードは、このEIPで承認されたアップデートをマイナーな公式アップデートとして受け取り有効化していきます。 EIP-867で提唱されたETHの救済方法は、このEIPの承認手順に則ったソフトフォーク的な方法だと言えます。 EIP Editorとは? EIPコミュニティには、EIP Editorという権限を持つ人物がいます。彼らは新たな提案を受け取り、その提案が適切である場合はEIPとして番号を与えて、EIPに関するGithubレポジトリに提案を検討(Draft)状態として公開します。 また、公開された提案に対する議論の末、EIPが公式アップデートとして取り込むべきと判断した場合には、提案を承認(Accept)し最終版を確認(Final)した上で公式なアップデートとします。 (提案されたEIPが経るプロセスフローチャート 引用:https://github.com/ethereum/EIPs/blob/master/EIPS/eip-1.md ) 2018年2月22日現在、EIP Editorはイーサリアムの開発者であるVitalik Buterin氏を含め6名です。EIP EditorやEIPコミュニティの目的やガイドラインについてはEIPの1番としてGithub上に掲げられています。 EIP Editor 平井洋一氏の懸念と辞職 2017年2月上旬に、6名いるEIP Editorの一人であった日本人論理学者の平井洋一氏が、EIP-867に関する提案を以下の2つの懸念事項を理由に受け入れられないと表明しました。平井氏はその後、この件をきっかけにEIP Editorを辞職します。この一件は、今回巻き起こっているEIP-867に関する倫理的な議論を象徴する出来事だと言えるでしょう。以下に平井氏の懸念事項を紹介し考察します。 平井氏の懸念 ① 〜イーサリアムの分散自治的な側面〜 ブロックチェーン技術に根ざしているイーサリアムは、そもそも国家や政府はもちろんのこと、どの様な立場の人や組織も管理権限を持たない分散自治組織的な設計がされています。この組織では権限者が居ないかわりに、全ての意思決定で全ユーザーの投票により過半数以上の賛成を必要とします。 しかし、そうとは言ってもイーサリアムの技術的な変更も公平なユーザーの投票によって過半数を得る事が最善とは言い切れません。イーサリアムは元々Vitalik氏を中心とした天才的なプログラマ達によって開発されている緻密な暗号理論に基づいたシステムです。これを正しく更新し続ける為には高度な専門知識が必要になります。そのため、イーサリアムEIPではこの様な背景から、EIP Editorが改善案の承認を最終的に行う事で初めて公式なアップデートとなるような一部の管理権限を認める仕組みを設けています。 この様な理由から権限を持つEIP Editorは慎重に検討して、イーサリアムコミュニティ全体にとって公平な改善案のみを承認するべきだと言えます。 平井氏の懸念事項の一つ目はこの点です。つまり、もし今回提案されたEIP-867が承認されれば、今後不正(と思われる)ETHの盗難や凍結があった場合に、この資金を最終的にどのように処理するのかと言う、極めて特定の利益に関わる決定権をEIP Editorが持つことになります。 これは上述したイーサリアムの分散システムの哲学に反します。EIP Editorはイーサリアム利用者の信任を得て決定される訳でも無く、また、その存在についても一般に高く認知はされていません。よってEIP Editorが特定のアカウントの残高情報を変更する強い権限を持つべきではない、というのが平井氏の指摘です。 “I don't think anybody has the authority to make an irregular state change. I don't think I have the authority to review processes regarding who has the authority to make an irregular state change. These beliefs come from the lack of authorizations from Ethereum users. I don't think all users of Ethereum gave authorization to this EIP process, or know about the EIP process. The EIP process is not mentioned in the licenses of Ethereum clients. EIP editors are not chosen democratically either.” (引用: https://github.com/ethereum/EIPs/pull/867#issuecomment-365541405 ) 平井氏の懸念 ② 〜日本の刑法との抵触の可能性〜 また日本人である平井氏がEIP Editorとして今後このEIP-867で述べられたERPを承認した場合に、日本の刑法 ”電磁的記録不正作出及び供用” に抵触する可能性があることを述べています。この刑法は、ある電磁記録に関する権限を持っていない状態で記録を作り出す・改変することを罰するという内容のものです。 例えば他人の預金残高の記録を持ち主の許可無く改変することはこの刑法で罰せられる可能性があります。 平井氏は直接的にどのように抵触するかについては言及していませんが、おそらく、EIP Editorとして他人のETH資金の情報を所有者の許可なしに書き換えるERP案を承認する行為が、この刑法での犯罪の幇助にあたると考えているのでしょう。 The Japanese penal code defines a crime called "Unauthorized Creation of Electromagnetic Records". (edit: this item applies also outside of Japan) I'm currently not in Japan but in Germany. I suspect there might be a similar rule in Germany, and I don't know how broadly that applies. Once I thought it's enough not to touch individual cases because I had civil cases in mind. After realizing the penal code aspects, I'm not sure if I can do anything here in this pull-request. (引用: https://github.com/ethereum/EIPs/pull/867#issuecomment-365541405 ) 平井氏の辞職 平井氏は当初、上述した2つの懸念事項を理由にEIP-867に対する否定的なコメント寄せました。ただし平井氏はその後の議論を経て、イーサリアムの哲学に反するという①の懸念事項については解釈を無視することで解決できるとしました。しかし、②の刑法への抵触については無視できないとしました。 平井氏が否定的なコメントを寄せる一方、イーサリアムのコミュニティマネジメント及びParityのテクニカルコミュニケーションを担当しているアフリ氏は、今回のERPの提案を強く支持しています。 そして、アフリ氏はTwitter上にて、日本という一つの国の法律に抵触する恐れがあるという理由で、イーサリアムに有用な提案が拒否されることは、イーサリアムコミュニティで起こるべきではないという旨の意見を表明し、平井氏がEIP Editorを辞任することを呼びかけました。 平井氏はこれに応答し、もし平井氏自身が辞任したとしても、それは後続のEIP Editorが刑法を無視することになるだけだという意見を表明しました。結果として、その10時間後にEIP Editorを辞任するに至りました。 各国の規制と分散自治組織の対立 今回紹介したEIP-867に関する議論は、イーサリアムにて大きな問題となっている盗難・凍結された資金の回収に関するものでした。しかしここから、イーサリアムと言う分散型システムを開発・推進するコミュニティが実際に存在することによって発生する、日本の法規制との対立構造が浮き彫りになりました。 公開されたブロックチェーンによって作られるシステムは、一般的に国などの従来の枠組みを超えた分散自治的な特徴を持っています。しかし、そのコミュニティに参加する人々は、何処かしらの国籍を持ち、自国の法規制に束縛されます。 今後ブロックチェーンをベースとした分散自治的な組織が更に拡大するでしょう。そして、そこで発生する従来の国や政府などの枠組みによる規制との対立をどのように解決していくのかは、分散自治組織を現実社会で利用する上で非常に重要な視点となるでしょう。
【イーサリアム】数字から見る:Byzantium Hard Fork

【イーサリアム】数字から見る:Byzantium Hard Fork

2017/10/26 at 5:43 PM 0 comments
イーサリアム、メトロポリスへの第一弾アップデート、Byzantiumが成功し、Ethereumのメインネット上で大きな失敗もなく稼働し始めました。2017年10月15日(日)の22時22分PST(日本時間:10月16日14時20分)に、予定していた日時よりも早く、Byzantiumフォークは実行され、4,370,000目のブロックで稼働し始めました。 数字から見る:Byzantium Hard Fork ByzantiumのハードフォークはEthereumのメインネット上で稼動し始めましたが、クライアントがアップグレードしていないという懸念があります。 どのような状況なのか、この記事で明らかにしていきます。 10月19日時点で、2017年10月15日にEthereum mainnet上で稼働をスタートしたByzantiumハードフォークは14,000目のブロックに到達しています。ブロックのマイニング報酬は5から3に調整されました。 現在懸念されていることは、かなりの割合のノードが、クライアントをByzantiumと互換性のあるバージョンにアップグレードしていないことです。 Geth実行中のノードは59.1%がv1.7.2以降にアップグレードしたにもかかわらず、Parity実行中のノードはわずか38.4%しかv1.7.6以降にアップグレードされていません。 Geth v1.7.1はByzantiumハードフォークと互換性がありますが、DoS(Denial of Service)脆弱性の影響を受け、ノードがオフラインになる可能性があります。 Byzantiumハードフォークのアップデートから3日後、他のEthereumフォークの状況が好転するかはまだ分かりません。 ハードフォークに先立ちETHは価格の上昇が予想され、その後約340ドルにとどまっていました。 10月18日時点で、Etherの価格はByzantiumによる市場の不確実性を反映して305ドルとなっています。   フォーク稼働の直前に、Gavin Woodが率いるParity Technologiesはこのような懸念を表明していました。 "fuzzing"と呼ばれるソフトウェアの品質保証技術によって、リリースより少し前にByzantiumでバグの存在が報告されていました。 Fuzz tester still finding #Ethereum Byzantium bugs. Parity yday, Geth 2day. Fork should be postponed until 2 w of no bugs, as with Frontier — Parity Technologies (@ParityTech) 2017年10月14日 ツイート:Fuzz 検査はまだ#Ethereum Byzantiumでのバグを発見しています。Parityでは昨日、Gethでは今日発見しました。フォークの稼働は2週間バグが発見されない状態になるまで、Frontierと同様に延期されます。   Parityは、バグが2週間発見されない状態になるまでフォーク稼働を遅らせることを提案しました。これはHudson Jamesonを含む他の開発者によって拒否されました。 最も顕著な改善の1つは、ディフィカルティの調整により平均ブロック生成時間が大幅に短縮したことです。 10月初旬では平均ブロック時間は約29秒でした。Byzantium稼働後、2017年10月17日現在、平均ブロック生成時間は約14秒です。 EtherScanによると、Ethereumのネットワークは、10月17日火曜日に過去最高の505,611件の取引を達成しました。 ブロックがより迅速にマイニングされるので、ブロック自体は小さくなります(ブロックあたりのトランザクション数が少なくなります)。 平均ブロックサイズの縮小を示す下のグラフを参照してください。 開発する上で多くの課題があり、Proof-of-Stakeについても多くの問題が残っていることは明らかです。 しかし、少なくとも初期の状況では、Metropolis の第一段階は機能しています。   (ソース元記事:https://www.ethnews.com/by-the-numbers-the-byzantium-hard-fork)
イーサリアム、メトロポリスへの第一弾アップデート、Byzantiumが成功

イーサリアム、メトロポリスへの第一弾アップデート、Byzantiumが成功

2017/10/24 at 6:42 PM 0 comments
イーサリアム、メトロポリスへの第一弾アップデート、Byzantiumが成功し、Ethereumのメインネット上で大きな失敗もなく稼働し始めました。 2017年10月15日(日)の22時22分PST(日本時間:10月16日14時20分)に、予定していた日時よりも早く、Byzantiumフォークは実行され、4,370,000目のブロックで稼働し始めました。 Byzantiumハードフォークでは、多くの利点をもたらすよう設計されたEthereum Improvement Protocolsをシステムにインテグレーションし、イーサリアムネットワークが強化されました。   多くの人々が様々な形でアップデートの成功に反応し、開発者たちも例外なくお祝いの言葉をツイートしました。 Hard fork celebration! pic.twitter.com/mL1ZyJOYeA — Vitalik Buterin (@VitalikButerin) 2017年10月16日   happy #byzantium hardfork from the @ParityTech offices #ethereum pic.twitter.com/ayImqaVjKh — Afri 5chdn (@5chdn) 2017年10月16日 アップデートに全く不具合がないということはありませんでした。ハードフォーク直前にバグが1つ発見されましたが、Ethereum Foundationの開発者らによって迅速に修正され、未然にトラブルを防ぎました。 Ethereum FoundationのHudson Jameson氏によると: Interesting fact about geth release this morning: it took one hour from the time the bug was discovered to patch it and alert everyone 👍 — Hudson Jameson (@hudsonjameson) 2017年10月14日 (ツイート内容:今朝のGethのリリースについての興味深い事実:バグを発見してから1時間で修正し、皆に警告することができました)   アップグレード後、開発者達はディフィカルティの調整や、ブロック承認プロセスの進捗状況を監視し続けました。 Buterinは10月16日AM5時46分(日本時間:10月16日21時46分)にステータスを更新しました: 1200 blocks into Byzantium so far so good. Difficulty almost fully readjusted, block times already back below 20s. https://t.co/4oxHwA1Uhh — Vitalik Buterin (@VitalikButerin) 2017年10月16日 (ツイート内容:これまでのところ、Byzantiumへの1200ブロックが入りました。 ディフィカルティはほぼ完全に再調整され、ブロック生成時間は既に20秒以下に戻っています。 http://status.ethereum.org/ )   Byzantiumハードフォークのアップデートは、多くの人や団体の協力なしでは、円滑な稼働を実現できませんでした。Ethereumはこの堅固なコミュニティのおかげで成長し発展し続けています。   (ソース元記事:https://www.ethnews.com/ethereums-byzantium-update-widely-successful)
【ETH】イーサリアム(Ethereum)メトロポリスへアップデート間近

【ETH】イーサリアム(Ethereum)メトロポリスへアップデート間近

2017/09/04 at 1:04 PM 24 comments
  イーサリアム(Ethereum)では、メトロポリス(Metropolis)と呼ばれる大型アップデートが10月中に実施される予定です。最近では8月1日にビットコインでもハードフォークが行われ、国内でも大きな波紋を呼びました。 さて今回イーサリアムのメトロポリスでは一体何が起こるのか解説していきたいと思います。   ■メトロポリスとは?そもそもハードフォークって何? メトロポリス(Metropolis)は、イーサリアム(Ethereum)の第3段階目の大型アップデートです。イーサリアムでは実装当初から4段階のハードフォークを前提とするロードマップが提示されています、このロードマップや今までの経緯については次章で詳しく説明します。   ①メトロポリスへのアップデートはいつ実施されるのか それではまず、今回のメトロポリスへのアップデートがいつ行われるか見ていきましょう。 結論としてまだ正確な実施日は決定していませんが、アップデートが全て完了するのは最速で2017年10月中ではないかと予測されています。 8月19日時点では9月末に行われることが濃厚でしたが、8月25日に行われたイーサリアムコミュニティのコアデベロッパー達による公開会議(Ethereum Core Devs Meeting #23、Vitalik Buterin((ヴィタリック・ブテリン:イーサリアムの考案者))をはじめYoichi HiraiやHudson Jamesonなどオンライン上で約20名の開発者が参加)で、今回行われるハードフォークの性質やEthereum Ice Ageと呼ばれる問題について多くの疑問が浮上したため、9月末か10月頭に再度ハードフォークの実施日が発表されることになりました。 (参照:Coindesk https://www.coindesk.com/ethereums-metropolis-upgrade-still-months-away/)   ②メトロポリスになって具体的に何が変わるのか メトロポリスではイーサリアムプラットフォーム全体のユーザビリティを向上させるため、プロトコル仕様からAPI、またERC20トークンの基準を含む、プラットフォーム全体の基準を改善し精査していきます。これは各技術者が起票したEIP(Ethereum Improvement Proposals)と呼ばれるイーサリアムの改善提案を基に議論や開発が行われていきます。   また2段階でハードフォークを行います。この2段階を、ビザンチウム(Byzantium)と、コンスタンティノープル(Constantinople)というコードネームで呼び、このハードフォークに向けて開発者達は約半年間に渡りテストプロセスをアップデートしてきました。 (参照:https://cointelegraph.com/news/update-on-ethereum-metropolis-from-core-dev-meeting)   具体的にメトロポリスで改善または調整が行われるのは3点です。   セキュリティの向上 プログラミングの簡素化 イーサリアムアイスエイジ=マイニングやディフィカルティの調整   <1.セキュリティの向上> メトロポリスでは、これまでのイーサリアムよりも「匿名性の向上」「ネットワークの強化」の二つの面でセキュリティが向上します。 「zk-SNARK」や「ゼロ知識証明」と呼ばれる暗号技術や手法が用いられ、より高いレベルでトランザクションの匿名化が可能になります。 これは潜在的に1秒間に数十億回のスマートコントラクトを自律的に強制実行することによりスケーラビリティ問題を解決するフレームワーク「Plasma」導入の第一ステップとなります。また秘密鍵を持つアドレスを決定することを可能にするマスキングという処理で、イーサリアムネットワーク全体のセキュリティを強化し、量子コンピュータのハッキングにも対抗することが可能になります。   <2.プログラミングの簡素化> プログラミングやスマートコントラクトのコーディングが遥かに簡素化され、プログラマーの負担を軽減します。全てのトランザクションを実行する際にかかる燃料=手数料となるガスの金額を決定する際、プログラマー自身での設定が不要になり、スマートコントラクトを実装すると自律的にガスプライスが決定されます。   <3.イーサリアムアイスエイジ=マイニングやディフィカルティの調整> メトロポリス後の最終アップデートである「セレニティ」では、Proof of Work(コンピュータパワーによる作業証明)からCasperと呼ばれるProof of Stake(ネットワーク上の資産による証明)へ、コンセンサスアルゴリズムの完全移行が計画されています。この完全移行に向けて、メトロポリスは中間段階となるため、マイニングに関係するディフィカルティやブロック生成時間をコントロールする必要があるのです。この調整期間のことを「イーサリアムアイスエイジ」と呼び、下記Vitalikのツイート画像右側の部分を指します。   https://twitter.com/VitalikButerin/status/901284981556641793/photo/1?ref_src=twsrc%5Etfw&ref_url=https%3A%2F%2Fcointelegraph.com%2Fnews%2Fupdate-on-ethereum-metropolis-from-core-dev-meeting   ③そもそもハードフォークとは ハードフォークとは、とても簡単に言うと「一本のブロックチェーンを分岐させる事」を指します。ブロックチェーン上にバグや大きな問題(例:The DAO事件)が発生した際、プロトコルを仕様変更することで新しいチェーンを意図的に作ること、これがハードフォークです。2016年に起きたThe DAOが攻撃されたハッキング事件や、先日行われたビットコインのハードフォークにおいても新しいチェーンが作られています。   ハードフォークを実施した場合、新しい通貨ができる場合とできない場合があります。   <ハードフォークの種類> 旧チェーンを放棄し、新しいチェーンへ移るハードフォーク 旧チェーンが存続し、通貨が2つ生まれるハードフォーク(例:ETHとETC) 多数のチェーンに分岐し、多数の通貨が生まれるハードフォーク(BTC,BCH,その他)   1の場合は、新しい通貨は発生しません。 2の場合は、The DAO事件が例となりますが、旧チェーンが生き残るため元々の通貨と、新しい通貨が生まれます。 3の場合は、意図的に多数の通貨を生み出します。   今回メトロポリスでは、ホームステッドへアップデートされた時と同様に、コミュニティ全体の総意が前提でハードフォークが行われます。このため新しい通貨が生まれることはないでしょう。   ■イーサリアムロードマップの説明 先述しましたが、全4段階あるロードマップの経緯について記載していきます。イーサリアムが公開されてから過去2年間、イーサリアムネットワークの柔軟性と機能性の向上を目指し常に議論が行われてきました。   フロンティア(Frontier) 2015年7月〜2016年3月 イーサリアム(Ethereum)ネットワークの初期リリース。Ethereum Foundationや開発者や企業がイーサリアムを学習し実験し掘り下げ、Dapps(分散型アプリケーション)とツールを構築することが可能になり、イーサリアムネットワークとの適合性がテストできるようになりました。   ホームステッド(Homestead) 2016年3月〜2017年10月予定 2016年3月に公開されたイーサリアム初の商用企業向けプロダクションリリース。プロトコルの改訂が多数行われ、ネットワークのアップグレードやトランザクションの高速化が可能となりました。これによりマイクロソフトやIBMを含む大手企業がイーサリアムベースのアプリケーションとプラットフォームの開発を正式に開始しました。   なお現時点でのバージョンのイーサリアムは、Enterprise Ethereum Alliance(以下EEA)に加盟する大手金融機関をはじめとしたグローバルトップ企業達が利用しています。2017年2月に組成されたこのEEAは、ホームステッド内でのバーションアップに大きな役割を果たしました。   メトロポリス(Metropolis) 2017年10月〜2018年?? Metropolisのリリースにより、イーサリアム内での開発が増加し、より大規模なビジネスがエコシステムに導入され、商用の分散型アプリケーション=Dappsが多数開発されることが期待されています。数々のグローバル大手企業がイーサリアムベースのプロジェクトで既に作業しているため、Ethereum Foundationは、このメトロポリスで大きな進歩を見込むと予想しています。   セレニティ(Serenity) 2018年??月〜2019年?? イーサリアムの最終段階です。最大の目標は、イーサリアムの創設者Vitalik Buterinのビジョンに従い、コンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSに移行することです。具体的な詳細はまだ明らかにされていません。 (ETHNews記事を加筆修正 https://www.ethnews.com/ethereums-road-map-for-2017)   Hudson Jameson(Ethereum Foundation)がプレゼンテーション時に使用したスライド Ethereum's Roadmap - Hudson Jameson at Construct 2017 Conference https://www.youtube.com/watch?v=OQtRzhgHEBg&t=1265s   ■メトロポリスが与えるETH(イーサリアム)の価格への影響 今回このメトロポリスへのアップデートによって、ETH(イーサリアム)の価格はどう推移いしていくのでしょうか。分析していきます。   まず過去の事例を見てみましょう。 前回ホームステッドへアップグレードされたのは2016年3月です。 ・1ETH=約268円(2月6日時点 約$2.5) ・1ETH=約1,600円(3月13日時点 約$15) ・1ETH=約2,300円(6月17日時点約$21.5 この近辺での最高値)   2016年2月から3月で約5.9倍、その後上昇下降を繰り返し、長期的にみると6月までで約8.5倍に価格が上昇しています。これは勿論その他の要素も関係しており、その後急降下していることも含めて考えなければいけません。ただしホームステッドへの期待から始まり、ハードフォークの成功を契機に、連鎖的に企業関連のポジティブなニュースが発生したことも、大型アップデートが値動きへ様々な影響を与えることを意味しています。今回メトロポリスへのアップデート周辺のニュースや動向には目が離せないこととなるでしょう。 (poloniex よりチャート転載 https://poloniex.com/exchange#usdt_eth )     ネガティブな要素としては、今後ディフィカルティが上昇し続けマイニングが減速するにつれ、価格が下がる可能性があります。しかしこれはイーサリアムネットワーク全体の将来的かつ長いスパンで起きている問題であり、一時的なポジティブなニュースと比べると影響が弱いと推察されます。   アップグレードによってシステム全体のユーザー数が増加し、価格が上昇する可能性の方が強いのではないでしょうか。さらに最終アップグレードであるセレニティに向けて期待が高まり、ネットワーク全体の安定性向上や、より大きな投資と価格のサポートをもたらすはずです。